はじめに
大切な人を亡くした悲しみは、言葉では表しきれないほど深いものです。その思い出を形にとどめ、故人を偲ぶ営みは、遺された者にとって欠かせないプロセス。そんな中、近年注目されているのが「デジタルストーリーテリング」という追悼の形です。
デジタルストーリーテリングとは、写真や動画、音声などのマルチメディアを活用して、故人の思い出を物語として伝える手法のこと。特に、SNSの普及により、その可能性は大きく広がっています。
思い出の品を写真に収め、エピソードを添えてSNSで共有する。故人を知る人たちと、オンライン上で思い出を語り合う。そんな営みを通して、新しい追悼のカタチが生まれつつあるのです。
本記事では、思い出の品のデジタルストーリーテリングについて、SNSを活用するメリットと実践のコツをお伝えします。デジタルの力を借りて、大切な人の思い出を未来につなぐヒントが、ここにあります。
SNSを活用するメリット
思い出の品のストーリーテリングに、SNSを活用することで得られるメリットは大きく3つあります。
1. 思い出を共有できる
SNSの最大の利点は、思い出を多くの人と共有できること。故人を知る人たちと、写真や思い出話をシェアすることで、より多面的に故人を偲ぶことができるのです。
家族や親戚、友人、同僚など、故人との関わりは人それぞれ。その一人ひとりが投稿する思い出の品は、故人の人となりを多角的に照らし出してくれるはず。
「あの人は、こんなところに旅行していたんだ」「こんなことを話していたなあ」。思いがけない発見があるかもしれません。故人を知る人たちとつながることで、思い出はより豊かに膨らんでいくのです。
2. 時空を超えてつながれる
SNSなら、時間や場所に縛られることなく、思い出をつなげることができます。例えば、海外に住む親戚とも、リアルタイムで故人を偲び合えるのです。
大切な人を失った悲しみは、国境を越えて共有できるもの。言葉は違っても、故人への愛情は同じです。そうした気持ちを、SNSを通して世界中の人と分かち合える。まさに、時空を超えたつながりと言えるでしょう。
3. 記録として残せる
SNSに投稿された思い出は、デジタルデータとして半永久的に残ります。アナログの遺品とは違い、劣化や消失の心配がないのです。
故人の思い出を、文字や写真、動画として記録に残せる。それは遺された者にとって、何よりも心強い財産になるはず。
将来、子どもや孫たちに、デジタルの記録を見せることができる。そこには、リアルな故人の姿があるでしょう。没後何十年経っても、思い出がいつでも蘇る。そんな新しい追悼のカタチを、SNSなら実現できるのです。
デジタルストーリーテリングの実践ステップ
では、実際にSNSを使って、思い出の品のデジタルストーリーテリングを行うには、どうすれば良いのでしょうか。ここでは、大まかな流れを4つのステップでご紹介します。
ステップ1:思い出の品を選ぶ
まずは、ストーリーテリングの題材となる思い出の品を選びましょう。故人の遺品の中から、特別な思い入れのあるものを選ぶのです。
思い出の詰まった写真、故人の手紙、愛用していた小物など。それぞれの品には、かけがえのないエピソードが隠れているはず。
品選びの際は、故人を偲ぶきっかけになりそうなものを意識するのが良いでしょう。「この品を見ると、あの人を思い出すんだ」。そんな気持ちを呼び起こせるアイテムを厳選するのです。
ステップ2:写真やエピソードを用意する
次に、選んだ思い出の品の写真を用意します。できるだけ鮮明に、品物の特徴が伝わるように撮影しましょう。
加えて、その品にまつわるエピソードを書き出してみるのもおすすめ。「この品は、こんな時に買ってもらった」「あの旅行の思い出の品」など、思い出話を言語化するのです。
こうすることで、SNSに投稿する際のストーリーの設計がしやすくなります。写真という「ビジュアル」と、エピソードという「ナラティブ」。その両方を用意することが、効果的なストーリーテリングの鍵となるのです。
ステップ3:SNSに投稿する
いよいよ、SNSに思い出の品を投稿する段階です。FacebookやInstagram、Twitter など、故人を知る人たちが集まりそうなSNSを選ぶのが良いでしょう。
投稿の際は、写真とエピソードを組み合わせ、ストーリー性のある内容を心がけましょう。「この品は、〇〇さんの宝物でした。あの時のエピソードは、今でも忘れられません」。
そんな風に、品物と思い出話を結びつけることで、より心に響く投稿になるはずです。ハッシュタグを活用して、故人を偲ぶ投稿であることを明示するのも効果的。「#〇〇さんを偲ぶ」など、投稿の趣旨が伝わるタグ付けを工夫しましょう。
ステップ4:対話を通して思い出を深める
SNSに投稿した思い出の品は、そこから新たなストーリーを生み出していきます。コメント欄で、故人を知る人たちとの対話が生まれるからです。
「その品、私も覚えています!」「〇〇さんは、こんなエピソードも話していたよ」。そんな反応を通して、思い出はより立体的になっていく。まるで、みんなで協力して、一つの物語を紡いでいくような感覚です。
そうしたやり取りを通して、改めて故人への感謝を感じられるはず。思い出を語り合う中で、故人の人柄や想いを、みんなで追体験できる。それこそが、デジタルストーリーテリングの醍醐味だと言えるでしょう。
まとめ
いかがでしたか。SNSを活用した、思い出の品のデジタルストーリーテリングについてご紹介しました。遺品という形見を、写真とエピソードで紡ぐ。そうすることで、新しい追悼のカタチが生まれています。
もちろん、SNSでの共有には、プライバシーへの配慮も必要です。投稿する内容は、故人や遺族の尊厳を損なわないよう、慎重に吟味することが大切。
でも、そうした配慮さえ怠らなければ、SNSは故人を偲ぶ強力なツールになるはず。特に、コロナ禍で直接会うことが難しい今、デジタルでつながる意味は大きいと言えます。
思い出の品を通して、改めて故人を感じる。そのプロセスをSNSで共有することで、より多くの人と、より長く、より深く、故人を偲べる。そんなデジタルならではの追悼のカタチを、ぜひ大切にしていきたいものです。
大切な人を失った悲しみは、何年経っても癒えるものではありません。でも、思い出を語り継ぐことで、少しずつ心の整理がついていく。いつまでも色褪せない、デジタルの記憶。それを胸に、また一歩ずつ前に進んでいけるのだと思います。
故人が遺してくれた、かけがえのない思い出。それを現代のテクノロジーで未来につなぐ。そんな新しい追悼のカタチを、SNSから始めてみませんか。
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